駄文館 展示室3A 

負け犬の遠吠え

 

「負け犬の遠吠え」という、ドラマを見た。酒井順子「負け犬の遠吠え」(講談社)が原作で、30代、独身で子どもがいない女性の主人公を軸に展開されるさわやかなドラマであった。

 

従来、「負け犬」は不幸でかわいそうな存在としてみられる傾向があった。だが、酒井氏の著書に端を発した「負け犬」ブームをきっかけとして、さまざまな「負け犬」の話が伝えられる中で、多くの人々が必ずしも彼女たちが従来の先入観に当てはまらないことを知ることとなった。それどころか彼女たちの多くは、実に生き生き仕事をし、趣味をもち、友人を大切にしていることを知ることとなった。また、比較的経済的に豊かであることも知られるようになった。そのことで、旅行やファッション、化粧品の業界では彼女たちをターゲットにした企画をさかんに打ち出すようになった。「負け犬」はいまや、さまざまな業界からひっぱりだこだといっても過言ではない。

 

このブームを受けて私はあらためて、先入観をもたれる本人(当事者)の発する言葉がいかに社会に大きな影響を与えることができるかを知った。そしてまたあらためて、当事者の話を聞くこと、届けることが大切であるということを感じた。

 

「負け犬」ブームの2004年が明け、2005年となった。今年は、どのような当時者の言葉に接することができるだろうか。

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